triggerhappysundaymorning

ガソリンスタンドに住みたい

ノンイグジステンスガ〜ル

...長い沈黙の後,彼女は真実を話しだした.「そう,わたしはあなたの想像の産物.わたしは今まで世界のにおいや風や日の暖かさを感じているような振りをしてきたけれども,それは全部あなたの想像なの.本当はこの世界を見る事も聞く事も出来ない.何かを感じた事さえない無いのよ.だってわたしは本当はこの世界に実在しないのだから.」
そう言い終えるなり彼女は僕の手を振り払って車道に飛び出した.でも本当は実在しない彼女は車に轢かれる事もなく,只そのままどこかへ消えた.僕はただ呆然とその場に立ちつくし,彼女の最後の面影を,車道に飛び出した瞬間ちらりと振り向きかけた彼女の顔に浮かんだかすかな笑みを何度も何度も思い返した.


日が傾きかけて来るまで彼女を失ったその車道脇に居た僕は,その時になってようやく,自分が一体何者なのかすっかり判らなくなっている事に気付いた.名前も,住所も思い出せない.彼女を失ったショックで記憶喪失になったのかと訝ったが,やがてそうではない事だけははっきりと判るようになってきた.僕は全ての実在の人を奪われた非実在の彼女の,彼女が想像で思い描いた非実在の「実在の人」だったんだ.誰もが彼女を奪われ,誰もを奪われた彼女が自身の実在の為に想像した実在の存在.
僕にとって唯一想像してくれる相手だった彼女が存在しなくなった今,僕の存在も急激に失われていってしまうのだろう.今や自分がどんな姿だったのかさえ自分で思い出せなくなりつつある.僕は周囲を見回し,この世界を,この糞溜のような素晴らしい世界を最後に一別し,そして彼女と同じように車道に走り出た.


...っていう感じの話をね,「非実在青少年」ってシュールな響きから連想しちゃうのよ.嫌まあなんというかファイトクラブの甘酸っぱい青春版みたいな奴をなんだけど.絵的にはid:orangestar氏の落書きで印象的なテイストレスな表情の女子,楽曲的にはナンバーガールの「透明少女」.


次のコミケ辺りでは「非実在少女」とかって感じの創作が大量に作られてるであろう事を今から予言.